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5G/ローカル5Gネットワーク評価の勘所

PC(iPerf/Ping)とネットワークテスタによる評価の違い

5G/ローカル5Gネットワーク評価の勘所

5G/ローカル5Gを使ったシステムを導入あるいは、提供するにあたり、把握しておきたいネットワークの性能に関する項目、また、ネットワークテスタMT1000A(以下MT1000A)を使用した測定手法、構成について説明します。

ネットワーク評価の必要性

5G/ローカル5Gを介したシステムを使用する場合、上り(Up link:UL)、下り(Down link:DL)方向ごとにネットワーク性能を事前に評価する必要があります。
5G/ローカル5Gネットワークの性能、品質は、システムの中の基地局(CU/DU、RU)、端末、L2SW、ルータなどの個々の機器に依存します。また、無線区間のUL/DLのタイムスロット比率の違いにより、UL、DLの方向ごとに、スループット性能などの違いもでてきます。
このような異なる種類の機器を組み合わせ、システムとして構築した場合、トータルのシステムの性能を把握することは、安定したシステムを運用、提供する上でも重要となります。

評価構成と評価項目

No. 評価項目 方向 説明
UDPスループット 1)UL
2)DL
片側から、試験UDPパケットをシステムの許容以上の負荷レートで送信し、もう一方側で、システムから試験UDPパケットを受信し、スループットを測定します。
パケットロスレート 1)UL
2)DL
片側から、試験UDPパケットをあらかじめ決められた負荷レートで送信し、もう一方側で、システムから試験UDPパケットを受信し、パケットロスの検出および、パケットロスレートを測定します。
遅延時間(最小/最大/平均値) 1)UL
2)DL
片側から、試験UDPパケットをあらかじめ決められた負荷レートで送信し、もう一方側で、システムから試験UDPパケットを受信し、遅延時間を測定します。
パケットジッタ(最小/最大/平均値) 1)UL
2)DL
片側から、試験UDPパケットをあらかじめ決められた負荷レートで送信し、もう一方側で、システムから試験UDPパケットを受信し、パケットジッタを測定します。
TCPスループット 1)UL
2)DL
片側から、試験TCPパケットを送信し、もう一方側で、システムから試験TCPパケットを受信後、ACKパケットを送信元に送信しながら、TCPスループットを測定します。

これらの項目を測定するにあたり、どの区間で評価をするのか、決めておく必要があります。

●5G/ローカル5Gのネットワークでの評価区間として以下の2つあります。

1)5Gコアネットワーク装置と端末間の通信

下記のように5Gコアネットワークと端末間で通信を行うシステムの場合、5Gコアネットワーク ー 端末間で評価を行います。

5Gコアネットワーク装置と端末間の通信

2)端末間の通信

下記のように端末と端末間で通信を行うシステムの場合、端末 - 端末間で評価を行います。

端末間の通信

●また、評価をするにあたり、以下のような評価パラメータを決めておく必要があります

1)パケットロスレート、遅延時間、パケットジッタ測定時の負荷レート

パケットロスレート、遅延時間、パケットジッタ値は、試験パケットのトラフィックレート負荷が大きくなると、変動量も大きくなります。このため、これらの測定を行う場合、UL、DL方向ごとにテスタからのトラフィック負荷レートを決めておく必要があります。
トラフィックの負荷レートを決める方法として、以下があります。

a)運用する際、通信するデータレートが決まっていれば、それと同じトラフィックレート、あるいは数%高いトラフィックレート(マージン)で測定します。
例えば、4Kカメラを接続する場合、カメラが出力する映像データと同じレートで評価

b)最大データレートから、マージンを持ったトラフィックレート
端末が設置されるポイントごとに、最大データレートは変動します(信号強度によりデータ変調方式が変わるため)。
最大データレートは、システムの負荷耐力性能に依存し、トラフィック負荷の経過時間により、変動します。
このため、最大データレートを負荷した状態では、安定状態でのシステム性能を評価することはできません。
このため、最大データレートから、事前に決めたマージンをとり、そのトラフィックレートで測定を行います。
例えば、測定ポイントA地点の最大データレート測定値が400Mbpsだとしたら、30%のマージンをとり、400Mbps*(1-0.3)=280Mbps の負荷レートで測定を行います。

以下は、DL方向のスループット(負荷レート)に対する遅延時間を測定した例です。
スループットが大きいほど、システムの負荷が大きくなり、遅延時間は大きくなり、ばらつきも大きくなることがわかります。

3)測定時間

システムの負荷耐力や、無線区間のSN比などにより、測定値は時間的に変動します。特に、負荷耐力の低いシステムでは、測定時間が長くなると、内部処理が追い付かなくなり、変動量が大きくなります。
このようなシステム負荷耐力、外的な要因の事象がとらえられる時間を測定時間として設定する必要があります。
以下は、測定時間 3分間のDL遅延時間変動例です。

4)試験パケットのサイズ

5G/ローカル5Gシステムでは、MTU(Maximum Transmission Unit)サイズが規定されています。MTUサイズ以上のパケットはシステムを透過できない場合や、フラグメントされ、分割処理されてしまう場合があります。
フラグメント処理が入ると、その処理時間が遅延時間として加算されます。
このため、試験パケットは、MTUあるいはMTUより小さいパケット長で、試験を行うことが必要となります。
MTUとは、通常は、IPパケットのサイズになります。このため、MTUに18バイトを加えたフレーム長がイーサネットのフレームサイズとなります。
一般的にシステムを透過可能なフレームサイズの範囲は、64バイト~(MTU+18)バイトとなりますが、同じデータレートでも、フレームサイズが小さいと、1秒間に処理するフレーム(パケット)の数が多くなり、システムの負荷が大きくなります。このため、測定を行うフレームサイズを決めておく必要があります。
試験パケットのサイズが小さいほど、システムの負荷が高くなりますので、注意が必要です。

iPerfとMT1000Aの測定項目比較

5G/ローカル5Gのネットワーク評価において、iPerfアプリを使用し評価をされているケースがあります。
ここでは、iPerfを使用した評価と、MT1000Aを用いた評価で、何ができて、できないのか比較し、さらに測定結果に違いがでるのか、それぞれの測定結果を比較し、違いについて分析します。

1)項目比較

以下は、iPerf、Pingアプリを使用して測定できる項目とMT1000Aを使用した測定項目を比較したものです。
iPerf、Pingアプリでは、方向ごとの遅延時間測定はできません。

測定項目 PC評価 MT1000A評価
iPerf Ping
UDP スループット測定 UL方向(端末→ローカル5G コア) -
DL方向(ローカル5G コア→端末) -
UDP パケットジッタ測定
 UL/DL方向ごと
AVE -
MIN/MAX × -
UDP 遅延時間測定 UL方向(端末→ローカル5G コア)
MIN/MAX/AVE
× -
DL方向(ローカル5G コア→端末)
MIN/MAX/AVE
× -
Ping RTT(往復時間) ×
TCPスループット測定 UL方向(端末→ローカル5G コア) -
DL方向(ローカル5G コア→端末) -

2)測定値の比較

iPerfは、PCや、スマートフォンなどの端末で動作ができるソフトウェアアプリケーションになります。
このため、CPU負荷状況により、処理能力が変動し、これにより、システムの正確な評価ができない場合がでてきます。また、ソフトウェアベースでは試験パケットの送信間隔を制御することができないため、システムに過剰の負荷をかけてしまい、正確な評価ができない場合があります。
MT1000Aは、ハードウェア処理で行っており、正確な評価ができます。
以下は、MT1000A、iPerfそれぞれで、UDPスループットを測定した結果例です。
横軸は、システムに負荷した試験フレームレート、縦軸は、システムから受信した試験フレームレート、およびパケロスレートを示します。iPerfでは、システムに入力するトラフィック負荷が200Mbps以上になると、パケロスが大きくなっています。

MT1000A、iPerfそれぞれで、UDPスループットを測定した結果例
(クリック拡大)

このように測定結果に違いがでてしまうのは何故でしょうか?違いが出る要因を分析しました。
資料は、こちらからダウンロードできます。

iPerf v3 との比較資料ダウンロードはこちらから