趣味で無線機を購入!デジ簡とは?

スマホがなかったバブル時代、移動体通信はアマチュア無線でした。数年前のこと、登山やサイクリングなどの野外アクティビティを楽しむとき、スマホで文字を打つよりボタン一つで話しかけたい、と思ったわけです。アマチュア無線の復活もよかったのですが、話しかける相手が免許を持っていることは稀です。そこで、誰でも使える無線機を探してみることにしました。
“1対多”通信の魅力―無線の種類
無線機の魅力は、スマホとは異なる1対多の(同報)通話ができる点です。グループの仲間に同時に話しかけられるのが特徴で、スマホの電波が届かない場所でも、ハンディー機を2台用意すれば、離れた相手とのコミュニケーションが可能になります。
先ず思いついたのがトランシーバー、「特定小電力無線」というもので、免許や資格が不要な反面、無線LANなどに干渉しないように出力が10 mWに制限されています。一部は他機種との互換があり、レストランや店舗でのいわゆる「インカム」に使われています。これでは通信距離が短そうと思っていると、全国通話が可能な「IP無線」を見つけました。調べてみると、携帯電話網を使うため、スマホが圏外になることもある登山には不向きでした。そして、アンリツはLMR(陸上移動無線)の測定ソリューションを提供していることから、業務用無線を思いつきましたが、レジャーに使えるのでしょうか。
デジタル簡易無線(デジ簡)とは?
そこで出会ったのが業務無線に用いる「デジタル簡易無線(DCR)」です。2024年12月に「アナログ簡易無線」が廃止(一部を除く)になり、デジタル簡易無線やIP無線に役目が移りました。デジ簡には、法人や団体などの組織に属する人が業務で利用するために申請する免許局と、登録申請することで、登録人以外の誰でも使用できる登録局(3R)があります。登録局は、個人で複数台まとめて申請可能で、レジャーでの利用も許されています。
最大出力は5 Wと特定小電力無線の500倍(約+27 dB)、到達距離にして約22倍、なんと見通しが良ければ10 km以上離れていても通信が可能です。筆者の用途に合致していますし、デジタルのためクリアな通話が期待できそうでした。貸し出しも可能なので、業務では広いイベント会場や工事現場などでインカムに活用されています。アマチュア無線のように呼び出しチャネルを使って、遠方の方と通信を楽しむ趣味もあり、ラジオ専門誌やWebに情報がたくさんあります。
デジ簡の通信品質と使い勝手
オンラインショップでポチっと2台購入、PTT(送信)ボタンを押してみたい気持ちを抑え、メーカーや総務省のサイトを参照しながら、複数台を登録する包括登録申請と開設届を提出しました。ビルの立ち並ぶ街中では通信距離が期待より短く感じましたが、山などのフィールドでは離れていてもクリアに通話ができました。また、購入機は防塵防水性能を備えており、登山中に沢に落としても問題なく使えたのが良かったです。
デジ簡の変調方式は「4値FSK」といって、2ビットを4つの周波数シフト(偏差)に割り当て、2.4 ksps(シンボルレート)で送信します。登録局へは351 MHz帯に6.25 kHz間隔(帯域幅はFMの半分)で割り当てられています。呼出符号(コールサイン)にあたるCSM番号が自動的に送信され、チャネルが使用中のときは混信を防ぐ(送信しない)キャリアセンス機能もあり、誰でも簡単に扱えるようになっています。デジタルによる秘匿性の高さも安心です。2023年度からチャネル数が30から82へ拡張され、2025年10月からは電子申請も可能になり、デジ簡の魅力が増々高まっています。
本当に役立った出来事
これまでに無線機が役に立った出来事は、山で片方の無線機を落としてしまったとき。PPTボタンを押して呼びかけてみると、届けられていた山小屋から応答があり、小屋まで30分以上歩いて戻り無事回収できました。なにか人の温かさを感じた一瞬でした。登山では仲間と離れることがないので出番は多くありませんが、メーカーの異なる機種間でも通話が可能なため、万が一のお守りにしています。
有限な周波数資源(電波)を利用しているので電波使用料はかかりますが、サブスクより安価で、災害時にも役立ちそうなので、デジ簡と共にこれからもアクティビティを楽しみたいと思います。