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自転車レースと無線 勝敗を分ける無線の一言

筆者の趣味である自転車にはさまざまな競技があり、ケイリンは日本発ですし、BMXのようなアクロバティックなモノもあります。よく観戦するのはプロのロードレース、「ツール・ド・フランス」なら皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。表彰台に上がるのは個人選手ですが、実はチームで戦っている一面があります。チームで戦うとは?そのとき監督は?

自転車ロードレースとは

大勢の選手がロードバイクというママチャリより軽量な自転車に跨り、基本的(たまに違います)に舗装された道路をときに200km近く走行して争うのがロードレースです。坂道を登る山頂ゴールのこともありますが、まず、典型的な平地でのレースパターンを紹介しましょう。

レースが始まってしばらくすると、大きな集団から先行してトップを走る逃げ(エスケープ)と呼ばれる少人数のグループができ、集団との時差(ギャップ)が開いていきます。レース後半になると集団が先行グループに追いつき(吸収)、終盤のゴール前スプリントで一番を取った選手が優勝です。マラソンの直後に100M走をするような競技にビックリですが、ゴールに向かう緊張感や、コースの特徴により強い選手が変わるのも面白いところです。

日本では周回コースが多いのですが、歴史ある欧州のレースでは道路を移動しながら争うため、運営関係者やチームの監督なども車で選手と一緒に走ります。レース運営では、天候や道路状況によりレースの中断やさまざまな指示を各チームへ伝える必要があり、無線機は重要なコミュニケーションツールになっています。運営の車には電波を遠くまで飛ばすための長いアンテナが取り付けられています。

広い範囲を移動するので、目の前を想像以上の速さで通過する選手を見て臨場感を味わいたい場合以外は、CATVやオンデマンドなどのメディアで観戦するのがおすすめです。モーターバイクからの映像のほか、ヘリコプターやドローンの上空からの映像、残り距離、逃げグループとのギャップなどのデータも画面に表示され、レースを楽しむことができます。ここでも位置特定のためのGPSや中継映像の伝送など、さまざまな無線技術が利用されており、ロードレースと無線は切り離せないものになっています。

レース中のコミュニケーション

話を冒頭に戻しましょう。自転車ロードレースは空気抵抗との戦いでもあり、そこが個人競技でありながら、チーム戦である所以です。チームはその日勝たせたい選手(エース)を他の選手(アシスト)が守って走ります。

レース中はすべてを自転車の上でこなすプロ選手たちなので、アシストがエースのために飲み物や補給食を運んだりもします。アタックといわれる予想外の動きに対応するとき、アシストが追いかけるのか、エースが自らついていくのか、はたまた他のチームに追わせるのか、状況に応じて戦術が変わってきます。横風などの気象条件も味方につけられるのか否か、一瞬の判断が勝負を分けることになります。

近くにいる選手同士なら、口頭でコミュニケーションできますが、後方のチーム監督の車やエスケープした選手とは距離が離れています。一部のレースでは無線機の使用を許されていて、監督はTV中継の映像なども参考にしながら、選手へ指示を出します。

国によって電波法が異なるため、無線の周波数や変調方式は違いますが、山岳地帯を移動することも多いので、VHF~UHF帯の高出力な業務用無線でFM変調が使われているといわれています。最近は秘匿性のあるデジタル変調(FSKなど)も使われているかもしれません。また、他のチームや運営側との混信を避けるため、周波数が割り当てられているとのことですから、可搬型SPA(スペクトラムアナライザ)で電波状況をモニタしてみると、面白いかもしれません。さらにAM/FM復調機能が付いたSPAなら、無線のやり取りが聞こえるかも。

チーム無線は禁止に

もし私が監督なら、無線機で伝えた通りに各選手が動き勝利を挙げたときは、ピタリとはまった戦術に高揚感を覚えるのでは、と妄想しています。しかし、無線機の使用によりチーム戦の色が濃くなる一方、危険回避のための動きが逆に落車などの危険を招く、戦術が画一化して面白くなくなる、選手の自己判断能力が低下する、などの弊害が懸念されています。現在、安全面からUCI(国際自転車競技連合)は試験的に無線の使用を禁止し、世界選手権なども無線なしで行われています。

無線オタクの端くれとしては残念ですが、だからといってレースの面白さがなくなることはありません。たとえば、レース集団内での人間関係などに注目してみても、また別の面白さがあります。

レース観戦以外にも、高校の自転車部を描いたコミックや自己犠牲(sacrifice)をテーマにした小説などもおすすめです。筆者は、レースに出るほどの体力も素質もありませんので、これからもテレビで各チームの戦術などを考察しながら、観戦を楽しみたいと思います。