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自転車レースと無線 機材と肉体の進化

昔、ロードバイク(ロードレース用自転車)を購入した頃、「F1マシンを個人で手に入れることはできないが、ツール・ド・フランスで使われる自転車なら購入できる」と言われていました。近年は価格が大幅に上昇し、気軽に買えるものではなくなりましたが、お金さえ出せばプロと同等の機材を手に入れられます。

比較的安全に参加できるヒルクライムレース会場へ行くと、筆者と同じバブル世代が、見るからに高そうなバイクにまたがっています。筆者も「良い機材を手にすればタイムも縮まるはず」と、肉体の進化はなかなか期待できませんが、旧型のロードバイクから最新モデルへ買い替えてみました。何が進化していたのでしょうか?

機材の進化

ツール・ド・フランスが始まった頃の自転車は鉄製で、選手は予備チューブを肩から掛け、自らパンク修理をしながら長距離を走破していました。まさに鉄人レースです。一方、現代のロードバイクはカーボンファイバ製が主流です。軽量であるだけでなく、空力性能を考慮した複雑な形状も実現できるようになりました。

かつては細いタイヤほど速いと考えられていましたが、データ分析が進んだ結果、適度に太いタイヤのほうが転がり抵抗を抑えられることがわかり、現在では太めのタイヤが主流となっています。変速機も大きく進化しました。以前はワイヤーによる機械式でしたが、現在では電動変速が普及しています。さらに上位モデルでは、変速指令を無線で伝送するシステムも登場しています。

現代のロードバイクは単なる「自転車」ではなく、電子技術や無線技術を搭載したシステムへと進化していると言えます。

肉体の進化

機材だけでなく、選手の身体づくりも大きく変わりました。筆者のハンドルに取り付けたサイクルコンピュータには速度、心拍数、ケイデンス(ペダル回転数)、出力パワーなどが表示されます。これらは胸に装着した心拍センサや、ペダルやクランクに組み込まれた歪計から取得したデータを基にしています。回転するペダルや選手の身体をケーブルで接続することはできません。そのため、各種センサとサイクルコンピュータは無線通信で接続されています。走行ルート、速度変化、獲得標高、消費カロリーなどが記録され、かつては感覚に頼っていたトレーニングも、今ではデータに基づくものへと変わりました。

プロのロードレースでは、ゴール前スプリントで選手が1 kWを超える出力を発揮することがあります。お湯が沸きそうです。また、登坂では体重当たりの出力、「W/kg」が重要になります。また、同じ出力をどれくらい維持できるかも勝敗を左右します。こうした指標は、センサによって取得されたデータの分析から生まれました。データを活用することで、選手は限界を超えて失速することなく、最高のパフォーマンスを発揮できるのです。

プロの世界では、補給した水分量や摂取カロリー、疲労状態や回復状況まで管理されます。近年では深部体温を測定するセンサも活用されていると聞きます。レース中にこうしたデータをリアルタイムで収集し、分析しているチームもあるでしょう。

無線が支えるスポーツの未来

現代のロードレースでは至る所で無線が活躍しています。変速操作を伝える無線、心拍やパワーを収集する無線、GPSによる位置情報取得、さらにはチームカーとの無線通信。かつて無線は「人と人をつなぐ技術」でした。しかし今では、「モノとモノをつなぎ、データを集める技術」としての役割も大きくなっています。ロードレースの世界を見ると、選手の身体から収集された膨大なデータが共有され、新たな知見となり、さらに速く走るための技術へとつながっています。スポーツの世界でも、知識とデータの収集・共有を支えているのは無線技術と言えるでしょう。

これからは、AIの登場により、膨大なデータ分析から戦術プランまで支援してもらう、そんな競技に進化していくのでしょうか。