ものづくりの知っトク

高性能と信頼性の両立。産業用機器の開発のコツ

休日には、小学生になったばかりの子供と一緒に、ボールを転がして次々と仕掛けを動かす装置を制作しています。連鎖がうまくいくと、つい子供以上に私自身がうれしく感じてしまいます。しかし、思った通りに作動させるのは難しく、パートごとに細かい調整とテストを繰り返して全体を組み上げていかなくてはいけません。これは製品開発と同じですね。もちろん、子供は早々に飽きて横でゲームをしていることもしばしば。

産業用機器に無線LANを組み込む理由

工場では、機械やロボット、遠隔監視カメラなどの産業用機器が使用されています。製造現場では、厳しい品質管理やコスト管理が求められ、生産設備の情報化は必須です。その中で、産業用機器を制御したり、情報を収集したりするために、免許不要で導入しやすい無線LANが広く使われています。しかし、産業用機器を開発する中で、組み込んだ無線LANがうまく動作せず、困ったことはありませんか?
今回は、このような産業用機器に無線LANモジュール*1を搭載する際の注意点をご紹介します。

* 1: 無線LANモジュール:無線LAN通信を行うために、チップや周辺回路、アンテナを小型の基盤に搭載し、通信機能を制御するコントローラとソフトウェアをパッケージ化した電子部品

無線LANモジュール組み込みの注意点

無線LANモジュールはさまざまなベンダーから販売されており、製品に簡単に搭載できます。しかし、実際に組み込むとモジュールの組み込みミスのほか、外部・内部からの電波干渉が通信を妨げてしまうことがあります。

外部からの電波干渉とは、他の機器や無線LANアクセスポイントからの電波が通信に悪影響を与えることです。また、金属製の構造物が電波を遮断したり、反射を引き起こしたりすることもあります。製品の出荷前には、これらの干渉にどれくらい耐えられるか、検証が必要です。

内部からの電波干渉とは、機器に搭載した電源回路やモーターなどの部品から発生するノイズが通信に影響を与えることです。この場合、部品の見直しやモジュール配置の再検討が必要になります。

機器内部の電波干渉事例

一例として、モーターから発生するノイズが通信品質に与える影響について紹介します。モーターのノイズは通信周波数と異なりますが、通信中にモーターを駆動させると、本来エラーが発生しないはずの受信条件下で、エラーが発生することがあります。このことから、モジュールが性能保証されていても、内部のノイズが通信障害を引き起こす可能性があることがわかります。

 

まとめ

こうした問題を避けるためには、開発の初期段階からテストを実施し、問題を早期発見することが重要です。早く問題を見つけることで、部品の交換など、抜本的な対策が可能になります。そのため、試験を自動化し、こまめにテストを繰り返すことが高性能と信頼性の両立を実現するためのカギとなります。冒頭のからくり装置の制作と同じように、試行錯誤を楽しみながら開発を進めていきましょう!

最後に、無線LANモジュールの組み込み後の試験や、試験の自動化のためのソリューションをご紹介します。