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医療機器における無線通信の利用

先日、テレビで無線通信技術を利用する内視鏡を目にしました。データを伝送するケーブルが無いため、取り回しやすそうでした。その内視鏡にはAIによる診断支援機能も搭載され、問題と思われる部位が一目瞭然でした。技術の進展には目を見張るものがあります。本記事では、医療機器で利用される無線通信技術とその課題についてご紹介します。

医療で利用される無線通信技術とその課題

医療機関では、バイタルサインのモニタリング、電子カルテや医用画像データの送受信、検査データの取得などにさまざまな無線通信技術が利用され、業務効率化と患者の安全確保に重要な役割を果たしています。

たとえば、Bluetooth®技術は省電力であり、パルスオキシメータ、血圧計、体温計、心電計、脳波計などデータ量が少ない医療機器に適しています。無線LANは、画像などのデータを高速にやりとりすることができ、内視鏡やレントゲン撮影装置などの医療機器で活用されています。さらに、患者のバイタルデータをモニタする医用テレメータに使用される特定小電力無線は、専用の無線周波数帯域が割り当てられているため、他の無線通信からの干渉の可能性は低いです。

トラブル要因

無線通信は機器の設置や移動時に通信用ケーブルが不要なため、医療スタッフや患者の行動を制限しにくいメリットがあります。その一方、通信が途切れたり速度が遅くなったりするトラブルが発生することがあります。

無線LANのトラブルの原因としては、複数の機器が使用する無線チャネルの重複や建物の構造による電波干渉が挙げられます。また、医療現場では無線LAN機器の台数が年々増加しており、患者が持ち込む通信端末も干渉の要因となります。その結果、無線がつながりにくくなったり、通信容量が減少して通信速度が低下したりする現象が発生します。

医用テレメータのトラブルについては、通信ができない(電波が届かない)という報告が多く、増改築やレイアウト変更による電波の減衰、アンテナの不適切な設置、他の無線機器やノイズ源との干渉などが原因とされています。

トラブル解決のために必要な試験とは

トラブルの原因を特定するためには電波環境の調査が必要です。まず、簡易的な測定方法で電波の強度を確認します。また、無線LANの場合には、受信できるアクセスポイントの数も確認します。電波強度が十分でない場合は、無線機器の配置や障害となりそうな物の位置を変え、電波強度が改善するか調べます。十分な電波強度があるにもかかわらず通信トラブルが発生する場合、干渉波の存在を疑います。

干渉波の探索には、スペクトラムアナライザ(SA)の活用が効果的です。SAに測定対象の電波周波数に合ったアンテナを組み合わせることで、医用テレメータや無線LANの電波に加えて、同じ周波数帯で干渉の原因となる電波を捉えることができます。まず、無線トラブルが発生している場所の電波状況を測定し、信号の強度や干渉の有無を確認します。干渉波の存在が確認されたら、干渉波が発生しているエリアを絞り込み、指向性の強いアンテナをさまざまな方向に向けて干渉波の発生源を特定します。

 

電波環境の調査には専門的な知識や経験が必要な場合も多く、手に負えない場合はアンリツの「測るサービス」担当部門へのご相談もご検討ください。

 

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