
高周波の整合回路設計に欠かせない”スミスチャート”とは?
今回のコラムではベクトルネットワークアナライザ(以下、VNA)の測定結果として得られるスミスチャート(Smith Chart)について説明します。
地球儀に似たグラフで一見すると難しいと思われるスミスチャートですが、回路のマッチングを考えるときに視覚的に理解し対策を立てやすくできる大変便利なものですので、是非使いこなせるようになりましょう。
図1 スミスチャート
図1は、どちらもスミスチャートと呼ばれるもので、左が誘導成分(L)や容量成分(C)を直列接続する場合に使用するインピーダンスチャート、右が誘導成分(L)や容量成分(C)を並列に接続する場合に使用するアドミタンスチャートで、主に反射特性を観測する場合に使用されます。
インピーダンスチャートは、横軸が抵抗成分(R)で、中央がインピーダンス50Ω、中央に近い所にあるほど、よく整合していることになります。
このチャートは、縦軸が複素成分のリアクタンス(jX)を示し、円の上半分は誘導成分(L)で、下半分は容量成分(C)となっています。
このL,C,R全ての合成値であるインピーダンス(Z)の、周波数毎の変化を表したのがインピーダンスチャートです。
アドミタンスチャートは、インピーダンスの逆数で、コンダクタンス(G)と複素成分サセプタンス(jB)を加算したものを表します。
アドミタンスは、インピーダンスの逆数、抵抗(R)の逆数ということで、電流の流れやすさを意味します。
縦軸もインピーダンスチャートとは逆に、円の上半分が容量成分、下半分が誘導成分を表しています。
図2 スミスチャートの読み方
図2で、もう少し詳しくスミスチャートの読み方を記載します。
抵抗成分を表す横軸中央の値が1になっており、右端にいくとインピーダンス∞、左端は0となります。
スミスチャートの横軸は、DUTのインピーダンスを基準インピーダンスで正規化した値を使用するため、DUTのインピーダンスを基準インピーダンスで割った値がプロットされます。
基準インピーダンスが50Ωの場合、DUTが55Ωであれば55Ω (DUTインピーダンス) / 50Ω (基準インピーダンス)で1.1となります。
横軸右端の∞を起点として、大きさの異なる円が描かれていますが、それぞれの円は、同じ抵抗値(R)であることを示しています。
横軸右端の∞を起点にして、チャートの上半分に複数描かれている下向きの弧は、それぞれ同一値の誘導性リアクタンス値であることを意味し、チャート下半分の上向きの弧は、それぞれ同一値の容量性リアクタンス値であることを意味します。
チャート上のどこにプロットされているか、を見ることで、誘導性、容量性、抵抗性、どの成分がどの程度基準のインピーダンスから離れているかを直感的に理解できると思います。
以上
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