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スペクトラムアナライザのカタログを読むときに<第6弾>  検波モード    

  <参考> 第1弾: 2次高調波歪み はこちら
 第2弾: 3次相互変調歪 はこちら
 第3弾: ダイナミックレンジ はこちら
第4弾: プリセレクタ はこちら
第5弾: 周波数バンド はこちら


スペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)を選定するとき、その性能を比較するためにデータシート(Technical Data Sheet)をご覧になることがあると思います。
このデータシートに書かれている項目で、皆さんが比較的難しく感じていると思われる項目についてわかりやすく解説します。
 

検波モード(検波方式、Detectionなどとも言います)はスペアナ特有の考え方です。
検波モードはスペアナに搭載されている基本的な機能です。
 

スペアナの大事な機能の一つとして未知の信号を測定することがあります。
スペアナは周波数やレベルが不明でも入力された信号は見落とさずに測定できなければいけません。
このスペアナの使命を達成するために検波モードがあります。
 

スペアナの測定画面の横軸は周波数になります。この横軸は一定数のポイントで表示されます。
例えば、横軸が1000ポイントで周波数幅1 GHzを表示している場合、画面の点と点の間隔は1 MHz (1 GHz÷1000) になります。
この1つのポイント間隔を測定するときにRBWが関係してきます。
RBWは周波数幅を持ったバンドパスフィルタで、その周波数幅の信号しか通しません。
前述のポイント間隔が1 MHzの場合に、各ポイントにRBWを並べるとします。
RBW1 MHzの場合はポイント間隔も1 MHzのため隙間なくRBWが並びますが、RBW100 kHzの場合は隙間なく並べることができずポイントの間で信号を測定できない周波数が生じてしまいます。
スペアナの周波数スパンやRBWは自由に設定できます。
周波数スパンとRBWの大小関係で信号を測定できたり、できなかったりしたらスペアナにとって由々しき問題です。

イメージとして、雨(信号)の量(振幅)をバケツ(RBW)で受けてみるとします。
測定ポイントが固定であれば、そこにバケツを配置します。
図のように、大きなバケツ(RBW)なら隙間なく並べられますが、小さなバケツ(RBW)なら隙間ができるので受けきれない雨があります。

202211-測定のツボ図1.png

信号を漏れなく測定するには、画面に表示されるポイントだけを測定するのでなく、ポイントとポイントの間の信号も測定する必要があります。
実際スペアナは表示ポイントの間にあるたくさんのデータを取り込んでいます。
そして、取り込んだデータから画面のポイントに表示するデータを決定する方法が検波モードになります。

小さなバケツを使った場合、バケツをたくさん並べれば漏れなく雨を受けきれます。
しかし、前述のとおり測定ポイントは決まっているので、測定ポイントの間にたくさん並べたバケツのデータを活用して代表値を決めて、それを測定ポイントの値とします。
代表値は、平均・最大・最小などいろいろあります。この代表値を決める方法が検波モードになります。

小さなバケツを使った場合、バケツをたくさん並べれば漏れなく雨を受けきれます。
しかし、前述のとおり測定ポイントは決まっているので、測定ポイントの間にたくさん並べたバケツのデータを活用して代表値を決めて、それを測定ポイントの値とします。
代表値は、平均・最大・最小などいろいろあります。
この代表値を決める方法が検波モードになります。

202211-測定のツボ図2.png

代表的な検波モードは次の5種類です。 

〇ポジティブピーク(Positive Peak, Positive, POSなどと表示)

名前の通り表示ポイント間のデータの最大値を示します。波形の輪郭を描くことができます。
CW信号のような一定振幅の電力や、パルス信号/バースト信号の尖頭電力の測定に使用します。
デジタル変調やノイズなどの『平均電力』の測定には利用しません。古いスペアナのデフォルト設定になっているケースが多いです。
 

〇ネガティブピーク(Negative Peak, Negative, NEGなどと表示)

ポジティブピークとは逆に、データの最小値を示します。あまり利用されるケースはありません。
 

〇ポジ&ネガ、またはノーマル(Pos&Neg, Normaなどと表示)

この検波モードではひとつの表示ポイントにポジティブピークとネガティブピークの両方のデータを割り付けます。
波形の輪郭を描くのと同時にポジとネガの間で線を引くことで、レベル変動の大きさも見ることができます。
マーカ等でデータを読むときはポジの値が返ってきます。
電力測定時の注意はポジティブピークと同じです。最近のスペアナのデフォルト設定になっているケースが多いです。

202211-測定のツボ図3.png

〇サンプル (Sampleと表示)

表示ポイントで取ったデータだけを使用します。表示ポイント間の他のデータは使用しません。
この検波モードは電力測定、特にデジタル変調やノイズなどのようにランダムに振幅が変化する信号の『平均電力』の測定で使用します。
デジタル変調やノイズなどは絶えず振幅が変化しています。
このような信号の一瞬の振幅を測定しても平均電力にはなりません。
数多くの一瞬の振幅を測定して、それらを平均することで平均電力を測定します。
ポジティブピークやポジ&ネガは表示ポイント間の一番大きな振幅なので、デジタル変調やノイズの『平均電力』は測定できません。
サンプルは、ポジティブピークやネガティブピークと同じく古いスペアナから利用されている基本的な検波モードです。

 

RMS

サンプルと違いがわかりにくい検波モードですが、サンプルと同じく『平均電力』の測定で利用します。
サンプルでは表示ポイント間の他のデータを使っていませんが、RMSではこれらのデータも活用して『平均電力』を算出します。
RMSRoot Mean Squareの略で、データの処理方法を表しています。
前からでなく後ろから読むと、データを2(Square)して平均(Mean)して平方根(Root)を取ります。
スペアナの画面表示は電力ですが、スペアナ内部では電圧で信号処理して、画面表示するときに電力に変換しています。
電圧のデータを電力平均するために、電圧を2乗して電力に換算してから平均し、再び電圧に戻すために平方根を取ります。
RMSはサンプルよりも扱うデータ数が多いので、同じ平均回数でもサンプルより早く収束します。
RMSは比較的新しい検波モードです(そうは言っても既に20年ぐらいたっていますが)
スペアナ内部の信号処理がアナログからデジタルに変わったことで実現できるようになりました。

 202211-測定のツボ図4.png

スペアナの初期状態では検波モードはポジ&ネガかポジティブピークです。
測定の目的により検波モードの使い分けが必要です。

・波形の測定:                                                ポジ&ネガ、ポジティブピーク
 ・ノイズやデジタル変調波の平均電力の測定:      サンプル、RMS
 ・バースト信号やパルス信号の尖頭電力の測定:   ポジ&ネガ、ポジティブピーク



 以上

※本記載内容は2022年11月1日現在のものです。


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