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スペクトラムアナライザのカタログを読むときに<第5弾>  周波数バンド    

  <参考> 第1弾: 2次高調波歪み はこちら
 第2弾: 3次相互変調歪 はこちら
 第3弾: ダイナミックレンジ はこちら
第4弾: プリセレクタ はこちら



スペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)を選定するとき、その性能を比較するためにデータシート(Technical Data Sheet)をご覧になることがあると思います。
このデータシートに書かれている項目で、皆さんが比較的難しく感じていると思われる項目についてわかりやすく解説します。
 

上限周波数が高い(数GHz以上*1)スペアナにはデータシート上に「周波数バンド」として周波数範囲と整数(場合により分数)が記載されています。
周波数バンドはスペアナ内部の回路構成の違いを表したものです。

 

周波数バンドの例

202210-測定のツボ図1.png

スペアナは数kHzから数十GHzまで広い周波数範囲を測定できます。この広い周波数範囲を同じ回路で測定するのでなく、周波数により最適な回路に切り替えて測定しています。
ハードウェア的に回路を切り替えて測定することもありますし、同じハードウェアでもその使用方法を切り替えて測定することもあります。
このような測定回路の構成の違いを表したのが周波数バンドです。

ミキシング次数は、4弾でお話ししたプリセレクタの説明の中で出てきたハーモニックミキサ回路と関係があります。 <4弾プリセレクタはこちら>

ハーモニックミキサ回路は、LO信号の整数倍の信号をハーモニックミキサ内部で作り出し、RF信号との差でIF信号を作り出しています。
このとき、LO信号の何倍を使ったかを表すのがミキシング次数になります。
例えば、ミキシング次数4とは、LO信号の4倍の信号を使ってRF信号からIF信号に変換しています。

202210-測定のツボ図2.png

ミキシング次数には同じ値が複数あります。例えば、周波数バンド78はともにミキシング次数が4です。
これはIF信号を作り出すときの引き算の順序の違いです。
⇒ 『RF信号-N×LO信号』か『N×LO信号-RF信号』

ちなみに、バンド0は基本波ミキサ回路を使った周波数変換部を表しています。
バンド1以上がハーモニックミキサ回路です。バンド0とバンド1以上はハードウェアを大きく切り替えています。 

ミキシング次数1/2は少し特殊な設定です。ハーモニックミキサとプリセレクタは組になって使われます。
プリセレクタを使える周波数を下げるためにはLO周波数を低くすることが必要で、そのためにLO信号の周波数を1/2にして使っています。
 

このミキシング次数が影響する性能は周波数測定です。
現在の標準的なスペアナには周波数カウンタ機能が内蔵されていて、高確度で周波数の測定ができます。
ハーモニックミキサ内でLO信号周波数がミキシング次数倍(N)されるとき、周波数分解能もN倍されます。
これが周波数測定の最小分解能による不確かさとして影響します。


周波数カウンタ 測定確度の例

202210-測定のツボ図3.png

周波数バンドもミキシング次数もスペアナを使うにあたっては気にする必要はありません。適切な次数の決定はすべてスペアナがしてくれます。
強いて言えば、同じ周波数でもミキシング次数が小さいとスペアナの性能が良い傾向にあります。 

*1:一般的に34 GHz付近の特定周波数で設計されており、メーカー/機種により異なります。   



 以上

※本記載内容は2022年10月1日現在のものです。


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