スペクトラムアナライザのカタログを読むときに<第8弾> 直線性
<参考>
第1弾: 2次高調波歪み はこちら
第2弾: 3次相互変調歪 はこちら
第3弾: ダイナミックレンジ はこちら
第4弾: プリセレクタ はこちら
第5弾: 周波数バンド はこちら
第6弾: 検波モード はこちら
第7弾: 表示平均雑音レベルはこちら
スペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)を選定する際に、その性能を比較するためにデータシート等をご覧になることがあると思います。
今回は、データシート等に書かれている項目について解説します。
『直線性』とは:
スペアナのRFコネクタに入力される信号のレベル(以下、入力レベル)と、スペアナで測定して画面に表示される信号レベル(以下、測定レベル)の関係をグラフにした際に、「グラフがどのくらい直線に近いか?」という性能を示す指標になります。
リニアリティ(Linearity)や忠実度/フィデリティ(Fidelity)と言うこともあります。
図1:直線性とは
データシートの直線性の見方:
データシートの直線性を見ることで、入力レベルの変化量に対して測定レベルの変化量がどのくらい正確に反映されるかという性能を判断できます。
測定レベルの絶対値の性能を示すものではないことに注意してください。
(測定レベルの絶対値を示す規格は別にあります。)
図2:直線性グラフ イメージ
図3の表記例で、仮に入力レベルが-20 dBmから-30 dBmまで理想的に10 dB変化した場合、実際の測定レベルは変化量10 dBに対して誤差±0.07 dBになります。
直線性の性能は、誤差が小さいほど良い性能と言えます。
図3:データシートの直線性の表記例
直線性は広いレベル範囲で規定されていると理想的ですが、実際は低レベル側と高レベル側で制限があります。
・低レベル側
低いレベルは、表示平均雑音レベル(DANL)で制限されます。
スペアナ内部では微弱な雑音が発生するので、入力レベルが雑音レベルより低くなると観測できません。
・高レベル側
スペアナ内部には多くの電子部品を使用しており、これらの電子部品で許容できる電力に制限があります。
仮に入力レベルが高過ぎて電子部品の許容電力を超えると正しく測定できません。
図4は、スペアナの直線性を示すグラフのイメージです。
直線性の性能は、グラフの真ん中ぐらいで規定します。
図4:直線性のイメージ
スペアナの進化と直線性:
直線性はスペアナのデジタル化によって劇的に改善された性能の一つです。
20~30年ほど前のスペアナはアナログのログアンプを使っていたため、直線性が悪く誤差が±数dB程度ありました。
しかし、最近10年ほどのスペアナはデジタル化されておりA/Dコンバータを使用しています。
直線性の誤差が±0.1 dB以下まで改善されているスペアナもあるので、レベルの測定精度が大きく向上しています。
手持ちのスペアナを利用する際には一度データシートをチェックしていただくことを推奨します。
以上
【関連製品のご紹介】 |
◆ アンリツのスペクトラムアナライザのラインナップ
研究・開発用途に適した高性能・多機能なハイエンドモデルから、
フィールド用途に適したハンドヘルドタイプのものまで、幅広いラインナップが揃っています。
▶シグナル/スペクトラムアナライザ製品一覧はこちら
▶ハンドヘルド-シグナル/スペクトラムアナライザ製品一覧はこちら