スペックだけではわからない無線LAN性能

仕事柄、無線のことが気になる私は、自宅のWi-FiルーターをWi-Fi 7対応の最新モデルに買い替えたいと思いつつ、Wi-Fi 7に対応する機器を持っていないのでためらっている今日この頃です。ところで皆さん、「スペック上は優れているのに、実際には期待通りに動かない」という経験はありませんか?
無線LAN機器の性能評価で見落とせない視点とは
無線LAN機器の開発時、搭載予定の市販無線LANモジュールの性能を単純にカタログスペックだけで判断していませんか? 無線LANモジュールそのものは高性能であっても、実際に機器に組み込んでみると、思った通りの通信速度や安定性が得られないことは珍しくありません。そこで大切なのが、搭載候補の無線LANモジュールを実際に開発品へ組み込み、しっかりと「性能検証」を行うことです。
たとえば、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は理論上、30 Gbps以上の高速通信が可能です。しかし実際には、機器内部の電源やモータなどからのノイズや電波干渉、アンテナ設計の影響などにより、期待する性能が得られないこともあります。つまり、無線LANモジュールが高性能であっても、実際の無線通信性能は、それを搭載する開発品側の設計に左右されてしまうのです。
また、同一の開発品であっても、複数の無線LANモジュールを実際に組み込んで比較してみると、変調精度(EVM)や受信感度(PER)などRF性能に違いが現れることがあります。製品によっては高速時に信号品質が低下したり、微弱信号下でエラー率が上昇したりする場合もあります。
定量的RF性能評価の必要性
無線LAN通信の性能はスループットの評価で知ることができますが、注意しておきたいのは、スループット試験が必ずしも万能ではないという点です。
スループットは、市販のアクセスポイントと端末を使ってファイル転送やベンチマークアプリで測定することができます。しかし、測定値にはばらつきがあり、環境やタイミングによって結果が変わってしまいます。さらに、プロトコル上のオーバーヘッドや制御信号の影響で、理論値の6〜7割程度が実効スループットの限界とされることもあります。
そこで重要になるのが、RF性能を定量的に測定することです。そのためには、専用の測定器が欠かせません。アンリツの「ワイヤレスコネクティビティテストセット MT8862A」は、ネットワークモードという機能を搭載しており、実際のアクセスポイントのように機器と通信しながら、EVM、RF出力、受信感度などを測定できます。特別なテストモードやファームウェアの変更は不要で、市販状態のまま評価が可能です。
RF性能の確認を後回しにすると、製品完成後に通信トラブルが発覚し、手戻りが発生してしまうおそれがあります。早期にRF性能をしっかり検証しておけば、トラブルを未然に防ぎ、品質向上と開発期間の短縮が実現できるはずです。
無線LAN機器の開発・評価にお悩みの方は、ぜひアンリツまでご相談ください。専門スタッフが最適な測定をご提案し、高品質で信頼性の高い製品づくりを全力でサポートします。
こちらのブログでも注意点をお伝えしています。